――光を、取り戻したいか。





―Us―




凄惨な死骸。
血糊にまみれる木々。


――俺。


闇が闇を喰らうなど、あってはならない。
闇が一層濃くなるだけ。


ならば、この喪失感を埋めてくれるのか?
ならば、闇から払拭してくれるのか?
ならば、光に会えるのか?


魔術師は、笑う。
光を追い出してはならなかった。
闇は次第にこの世界を浸透し。
溢れ出て、異世界まで呑まれた。


私は、間違いを正すため、ここに来た。
彼女はこの世界に必要だ。
たとえ、闇に魅せられていたとしても。


魔術師は自らの生命と引き換えに。


――彼女はお前を忘れたかもしれない。
――彼女に触れることは叶わない。
――彼女が光だと悟られてはならない。


それでも、お前は行くか。


魔術師が崩れ落ちる。
俺は霧に塗れる。
はかない旅路の果てを示すようで。
不安で、目を閉じた。




予想以上の闇に侵食され。
かつ誰もが気付かない。
彼女の世界は、どこか寂しい。


闇の者は、必死に光を求め群がる。
確かに、その中心が彼女。


そして、俺は、見つけた。
日常に芽生える星のように。
人という人の中から。
彼女にはたおやかな光があって。




――触れたい。


手をつかんで、振り向かせて。
君はきっと覚えていない、けれど。


抱きしめたい。


柔らかな、華奢な体を。
時折見せる淋しげな表情を。


けれど、それは叶わない。




――何故、叶えては、いけないのか。




俺は、闇夜に佇む彼女に。
少し、近づいて。
手を、伸ばして。


そして、彼女は、闇に呑まれた。